――愛媛県有数の絶景ポイント、下灘駅、しまなみ海道、四国カルスト。これらの場所に共通する人気のカフェがあります。白くてコロンとしたフォルムも可愛いキッチンカーを使ったオープンエアカフェで、風景に映えるビジュアルも魅力。丁寧にハンドドリップされたコーヒーを青空の下で味わえば、開放感と幸福感に満たされます。
そんな場所と時間、味を提供してくれるのが、戸田英清さん。ウエディングプランニングから絶景のコーヒーショップまで、さまざまな幸せを届けています。
タイミングを掴んで切り拓くビジネス
――最初に、戸田さんの経歴をお聞かせください。
【戸田】
出身は愛媛県伊予市です。大学卒業後、東京の証券会社に就職しましたが、退職して海外へ出たり、帰国してサービスの仕事をしたりする中で、ウエディングの現場で働く機会がありました。華やかで、特に当時勢いもあったウエディング業界で、それぞれの人が現場で主力になって活躍している様子を見て、自分もそういう場所で力を発揮してみたいと思い、ウエディング企画会社に再就職しました。
とてもやりがいがあり、楽しい職場でしたが、もともと独立志向を持っていたこともあり、2006年、30歳のときに愛媛に帰ってウエディングプランニングの会社を起こしました。それが今の会社「アルテフィーチェ」です。
たくさんのお客様のさまざまなオリジナルウエディングをサポートしながら、2017年に同社にカフェ部門を開設しました。キッチンカーを使ったオープンエアカフェ「下灘珈琲」が1号店です。2019年に「しまなみコーヒー」、2020年には「カルスト珈琲」もオープンし、現在3店舗を営業しています。
――「下灘珈琲」を始めとするカフェは、SNSにも多くの方がアップされている人気店ですね。
【戸田】
ありがたいですね。今はウエディングよりもカフェの仕事に比重を置いているという状況でもあります。コロナの影響で、ウエディングは数が激減してしまっていることもありますが、ただ、今はあれもこれもではなく、一つのことに集中するのが良いタイミングなのかもしれません。
――「下灘珈琲」はオープン当時、愛媛県でもキッチンカーの先駆け的な存在ではなかったでしょうか。何かきっかけがあったのですか?
【戸田】
何か一つのきっかけというよりも、色々なタイミングがぴったり合ったのだと思います。まず、キッチンカー「たまごちゃん」と出会ったこと。ある方が移動販売をしていた車を手放されるという話があって、それが「たまごちゃん」でした。ひと目みて、その可愛さに衝撃を受けたんです。当時はウエディングの仕事しかしていなかったので、前撮りとか、ウエディング関係で使えそうだなと思いました。
次に、下灘駅です。「日本一海が近い駅」という評判が全国にも広まり始めた頃でした。実家が下灘で、年末年始などで帰省すると、たくさんの観光客が駅に集まっていることに驚きました。そこで、駅の目の前にある空き地で何かできないかなと考えたのです。交渉すると、そこを借りられることになりました。
それらがピタッと重なって、キッチンカーを据え置きにしてコーヒーショップを始めることにしたんです。最初は不安もありましたよ。商売になるのかな、失敗したらどうしようとか。でも、ダメだったら車はウエディングの撮影でも使えるし、とにかくやってみようと。
絶景ポイントをコーヒーでさらに味わい深く
――下灘駅という場所に注目した目の良さも感じます。しまなみ海道、四国カルストも絶景と称される場所ですよね。
【戸田】
ただ人が集まるだけではダメ。コーヒーを売るだけでもダメ。コーヒーはコンビニでも100円出せば十分おいしいものが飲める時代です。うちでものすごく良い豆を自家焙煎して味で勝負ということでもありませんでしたから。
場所に関して言えば、その風景に訪れる価値があるかどうかが大事です。人が集まるほど素晴らしい景色があって、そこを目指してやって来て、さらにそこで美味しいコーヒーを飲めれば、嬉しいじゃないですか。 下灘、しまなみ、カルストという素晴らしいロケーションがあって、青空を背景にあのキッチンカーの白いたまごちゃんがあって。コーヒーや、綺麗な色のみかんジュースが映えるので、一緒に写真を撮って皆さんがSNSなどにもあげてくださるようになりました。
――なぜ、商品にコーヒーを選んだのですか?
【戸田】
実は、少しだけコーヒーの仕事をしていたことがあるんです。「下灘珈琲」を始める2年くらい前に、シェアカフェをやってみないかというお誘いをいただいて、ウエディングの仕事の空き時間が使えて、設備もそこにあるものを使うことができるので、軽い気持ちで参加しました。結果は赤字でしたが、ハンドドリップのコーヒーの淹れ方を教わったので、技術を身につけることができました。
面白いネタは逃さない、時と場を見据える目
――お話を伺っていると、さまざまな角度で先見の明があったのだろうと感じます。ご自身ではどうですか?
【戸田】
日頃から色々ネタ探しをしていたのは確かですが、やっぱりタイミングかな。「下灘珈琲」を始めた頃は同業のライバルがまだいなかったし、下灘が地元で、あの場所を借りられたことも良かった。キッチンカーのたまごちゃんがあったこともそうです。すべてがピタッと繋がったんですね。でも、こうして3店舗が軌道に乗ったことは、本当にありがたいなと思っています。
――今後さらにやってみたいことや夢などをお聞かせください。
【戸田】
魅力ある場所で、そのロケーションを生かした何かができたらいいですね。例えば、今のコーヒー3店舗も場所ありき。場所は大切です。
色々なことを繋ぐハブになれたら面白いかな、というビジョンはあります。まだ具体的ではありませんが。例えば、この会社がある海辺の町で、空いている倉庫跡を生かして何かできないかなとか。ゲストハウスにして、海や町でレジャーを楽しめるようにしたり。
仕事は時代を反映していると思います。ウエディングにしても、華やかなのが主流だった時代から、小さくてもオリジナルを求める時代になりました。そして時代と同時に、地域性にもマッチしていなくては続かないとも感じています。特別な場所で式をあげることが、地域によってはプラスに受け止められないこともあります。
でもウエディングの形も、また変わっていくかもしれませんね。新しいビジネスチャンスが見えてくれば、自分にしかしかできないことをしたいです。 どこにどんなネタがあるかわからないですから、また海外も含めていろんな場所へ行って、ネタを仕込んで来たいですね。
戸田さんとのSo-Gu体験
戸田英清さんとは、愛媛県松山市でSo-Guできます。
※現在、体験プログラム鋭意作成中。