――家族構成の変化やライフスタイルの多様化などを背景に、近年進展していた食の外部化や簡便化。その食意識や志向がコロナ禍の中で見直され始めています。自宅で食事をする機会が増え、より良いものやこだわった商品を自宅で楽しみ、食を通じた精神的な豊かさを求める人が急増。生産者を意識した購買やストーリーを一緒に楽しむ傾向も高まっています。
眞鍋久美さんが食のセレクトショップ「まなべ商店」を開業したのは、今から8年前のこと。四国のちょうど真ん中、愛媛県四国中央市から「四国のおいしいもの」とともに、食の楽しさと作り手の想いを伝え続けています。
四国の美味しいものを広める
――はじめに、経歴と自己紹介をお願いします。
【眞鍋】
生まれは高知県高知市で、父親の仕事の関係で4歳くらいまでは高松市(香川県)に住んでいました。そこから高知市に戻ってきて、高校までは高知、大学進学で松山市(愛媛県)へ。大学卒業後は、やっぱり大好きな高知で働きたかったので地元に戻り、ホームページ制作会社に営業兼事務として入社しました。その会社では、広告代理店の方と一緒にホームページ制作の営業に回り、売れるホームページの作り方をご案内していました。当時はインターネット黎明期だったので、ホームページの前に、そもそも「インターネットとは?」という所から説明をする必要があって、始めのうちは全然理解してもらえなかったので、すごく楽しいお仕事でしたが、なかなか大変な営業でしたね(笑)。
その他に、タブロイド紙の編集やグラフィックデザインなどもおこなう会社だったので、特集誌面のコーディネーターのようなお仕事も担当していました。29歳で結婚して退社するまでの7年間、そこで勤めていた経験が今に繋がっているという感じですね。
――ご結婚と同時に四国中央市に移住されましたが、お店の開業まではどんなお仕事をされていたのでしょうか?
【眞鍋】
前職でお世話になっていたお店の通販のお手伝いや色々な取材のコーディネート、高知の観光コンシェルジュなどをフリーでやっていました。
――では、「まなべ商店」のきっかけや開業の経緯などをお聞かせください。
【眞鍋】
農業でのU・Iターン、実家を継ぐ形で帰ってくる同級生が多く、色んな生産者さんと繋がる機会が増えたこともありましたが、直接のきっかけは四国経済産業局のフォーラムに参加したときですね。四国の仕事と暮らしがテーマのフォーラムで、都会から帰ってきた魅力的な2代目や3代目の担い手さんと沢山出会いました。
それまで高知ばかりを見ていたんですが、「四国って面白い人がいっぱいいるんだ」ということに気づいて、そういった方々や友達の生産者さんがつくる野菜、美味しい加工品を何とか広められないかと思ったのが始まりです。都会のバイヤーさんに四国の商品を紹介する方法も考えましたが、「久美ちゃん、自分で売ってみたら?」と友達から言われたことで、自分で始めることを決めました。
――開業後、お客さんや周りの反応はいかがでしたか?
【眞鍋】
実は、始めて1年半くらいは実店舗を持たず、四国4県のイベントをぐるぐる回っていました。結果的に宣伝活動にもなるので、色んなイベントを回っていましたが、「いつお店を持つの?」とお客さんから聞かれることも多かったですね。実店舗は、2013年6月にオープンしました。
商品のストーリー、作り手のライフスタイルまで伝える
――お店のコンセプトや取り扱う商品についてお聞かせください。
【眞鍋】
自分が食べて美味しいと思うもの、それが1回ではなくて、ずっと食べたいと思うもの。なおかつ、生産者さんとしっかりコミュニケーションをとって、商品のストーリーや生産者さんのライフスタイルまでお客さんに伝えられるように、という想いでやっています。
お店に並ぶ商品は、もともと繋がっていた生産者さんの商品、その繋がりから知り合った生産者さんの商品がほとんどです。食の感性やライフスタイル、何か繋がるものがないと分かり合えないと思っているので、営業で持ってこられる商品はほとんど置いていません。
――ぜひ、眞鍋さんイチオシの商品を教えてください。
【眞鍋】
「畑のラー油」は当初からリピーターさんも多くて、一番全国に広まった商品かもしれないですね。“旨味ラー油”的な感じです。ただ辛いだけではなく旨味があって、お味噌汁に入れてもいいし、そうめん・うどんに使ってもいいし、卵かけご飯にかけても美味しいです。
目標は「四国のおいしものカー」で全国行脚
――ご自身としては、やはりこういった美味しいものを沢山の人に知ってもらいたい、という想いが一番にあるのでしょうか?
【眞鍋】
食べものって本当に身近なもので、作り手さんのことを知ると、より美味しく感じると思うんですよね。食べることがより大事になるし、楽しくなる。それをお伝え出来たらいいなと。
今の時代、インターネットで何でも買えるし、スーパーに行けば何万もの商品が売られているなかで、買われる方々が“商品を選ぶ基準”を持っていたら、もっと暮らしが豊かになるんじゃないかなと思っています。
――お店以外のお仕事や活動についても教えてください。
【眞鍋】
松山三越(愛媛県松山市)の地下食品フロア、「THE CENTRAL MARKET」さんのコーディネーターを務めています。グローサリー部門を中心に商品ラインナップや売り場の企画、食をテーマにしたフリーペーパーの企画、今後はイベントスペースのコーディネートや食イベントの企画などもお手伝いさせていただきます。
フリーペーパーの企画やコーディネートは会社員時代の仕事に通ずるものがあって、食にまつわる仕事は「まなべ商店」としてやってきたことで、これまでの経験がそのまま今回のお仕事に繋がっている気がして、すごくありがたいお話と貴重な機会をいただきました。
その他、最近では、高知市内の自然派食堂「自然cafe えんのした」さんとのコラボも始まりました。お店では、まなべ商店で販売しているお茶がドリンクバーに取り入れられていたり、私の繋がっている生産者さんの食材が料理に使われていたり、店内にはまなべ商店ブースも設置されています。地元の高知でも拠点が欲しかったので、既存のお客さんだけではなく、色んな方にセレクトした商品に触れてもらえる、実際に食べて楽しんでもらえる環境が出来たのは、本当に嬉しい限りです。
――最後に、今後の目標などをお聞かせください。
【眞鍋】
あまり表に出ていない四国の郷土料理をリブランディングして、商品化したいと思っています。何気なく食卓に並んでいる地域の家庭料理を掘り起こし、パッケージングしていきたいですね。それと同時に、まだまだ四国には魅力的な食材が眠っているので、各県の良いとこ取りをしたコラボ商品も企画・開発したいと考えています。
あとは、もう少し世の中が落ち着いたら、四国の商品を積んだ「四国のおいしいものカー」で日本全国を周るという目標も持っています。もともとジッとしているのが無理なタイプなので、とにかく動き続けていたいですね!
眞鍋さんとのSo-Gu体験
眞鍋久美さんとは、愛媛県四国中央市でSo-Guできます。
※現在、体験プログラム鋭意作成中。