――人口減少や地域経済の縮小、人手不足など、山積する地域課題の解決を目指し、近年全国各地でさまざまな取り組みが進められています。ゼロからイチを生み出す挑戦、地域の発展を目指す取り組みは、無限の可能性を秘めています。その反面、ある種の曖昧さを含んでいるのが「地方創生」や「地域活性化」という言葉。徳島県三好市を拠点とする西村耕世さんは、それらのキーワードに対し、地域と子どもたちの未来をテーマに活動しています。
大阪から両親の故郷へ
――はじめに、西村さんの経歴と移住に至った経緯をお聞かせください。
【西村】
出身は大阪で、大学卒業後は進学情報誌の制作会社に就職しました。いわゆる進路指導室に置いてある本の制作で、大学や専門学校、短大の広報担当者と掲載内容を詰め、デザイナーに渡す進行管理業務を10年間おこないました。移住の経緯としては、両親が三好市出身で、父も長男、僕も長男なので、いずれ帰るんだろうなとは思っていたんですが、父方の祖父母が亡くなり、住んでいた家が空き家になったことがきっかけでした。毎月、家に風を通しに行ったり、畑も持っていたので、耕しに行ったり。2年ほど続いたのですが、毎月だと体力的にも金銭的にも厳しいですよね(笑)。そんな時、父親から「そろそろ移住しようか?」という話があり、結婚して子どもも2人いたので、家族で話し合いました。結果、すぐに移住が決まり、2014年10月に三好市に移住しました。
――移住後は、どんなお仕事をされていたのでしょう?
【西村】
大阪にいる時から何社か面接を受けていて、選考が進んでいたのが三好市にサテライトオフィスを構える会社でした。大阪支社で面接を受け、最終面接は現地でおこない、内定を受けたのは移住後でしたね。人事評価制度の構築や運用を事業とする会社で、入社1年でサテライトオフィスの統括マネージャーに就任し、国内11拠点の責任者を務めました。主に、各拠点メンバーの育成、人事採用、行政機関とのやり取りなどを担当していました。
人と人、企業と企業をつなぐ
――独立に至った理由、経緯をお聞かせください。
【西村】
色々なことが重なったのですが、ひとつは入社して4年ほど経ったときの組織改編ですね。サテライトオフィスの統括から営業拠点付きに業務が変わり、それまでおこなってきた地域との連携がなくなってしまいました。そこが僕の中で一番楽しかった部分で、これから何をしたらいいのだろうかと。そのタイミングで、友人から一緒に仕事をしないかと声をかけてもらったことがきっかけですね。好きな人と同じ時間を過ごせて、それでお金がもらえて、自分たちが楽しそうにしている姿を子どもたちにも見せられるなと思ったんです。
――当時、どんなビジネスモデルを描いて独立されたのでしょうか?
【西村】
特にありませんでした。ただ、何ができるのかなと考えたとき、前職で築いたネットワークや業務としておこなってきた人事評価関係のスキルは活かせると思って。あとは、もうひとつの武器として、徳島県西部には当時なかった人材紹介事業をやろうと思い、免許を取得し、2019年7月に個人事業主「アンファング」として独立しました。その後、2020年6月には、友人と「株式会社Fobs」を立ち上げ、代表に就任しました。実は、そこでも具体的な事業内容は決まっておらず、地域活性化はしたいよね、くらいでした(笑)。最初にいただいたお仕事は、2020年7月の地元サービスエリアでのイベント企画と運営業務でしたね。
――現在の事業内容についてお聞かせください。
【西村】
地域活性化事業を主軸に、行政機関と連携したお仕事やビジネスコミュニティの運営、Webやグラフィックのデザインもおこなっています。行政とのお仕事では、徳島県のふるさとワーキングホリデー「わくWORK徳島!」という事業の運営事務局を2021年から担当しています。
――「わくWORK徳島!」とは、どういった取り組みなのでしょうか?
【西村】
県外在住の18歳以上の若者を対象に、2週間から1カ月ほど地元企業で働きながら滞在してもらい、地域との交流やイベント等を通じて、徳島の魅力を体感してもらうという取り組みです。
――運営されているビジネスコミュニティについてもお聞かせください。
【西村】
関西エリアのビジネスコミュニティ「関西活性化プロジェクト」を運営されている株式会社パズルさんとの連携事業で、四国の企業と四国に興味のある方向けに、ビジネスの場づくりをおこなっています。関西活性化プロジェクトは、神戸、大阪、京都を中心に190社以上の事業者が参加していて、さらにエリアを拡大していきたいというお話があったので、四国エリアの運営をさせていただけないかとお願いし、2021年5月から「四国活性化プロジェクト」をスタートしました。現在、毎月の勉強会や異業種交流会、個別でのビジネスマッチングを中心に運営しています。
「楽しい」を軸に、地域と子どもたちのために
――地域活性化が主軸とのことですが、西村さんにとっての地域活性化のテーマをお聞かせください。
【西村】
子どもたちがずっと住み続けられる町にするためには、どう行動すればいいのか、という考えが根底にあります。当然、地元企業も存続し続けなければならないので、自分たちが地域外とつないで、新しい考え方を身につけていただく。人も同じで、この町は何もないと思う人が多いと、どんどん出ていってしまう。なので、何もないという言葉をなくしていきたいですね。学生さんや若者との交流に力を入れている理由もそこにあります。
――日々、仕事をする上で大切にしてることはありますか?
【西村】
自分が楽しめるかどうかですね。金額や好き嫌いではなく、どちらの選択肢が楽しそうかを軸に選んでいます。少額や金銭のやり取りが発生しないことでも、それが楽しめそうで、次にもつながりそうだなと感じられれば引き受けてきました。これからも「楽しい」を軸に選んでいくんだろうなと思っています。
――最後に、今後の目標をお聞かせください。
【西村】
来年度、新しい事業もスタートするので、とにかく目の前のチャンスを一つひとつしっかり掴んでいきたいと思っています。あとは、好きな人たちと楽しく仕事をしていきたいので、次のステップは雇用や関わってくれる人を増やすこと。一緒に楽しい時間を過ごせる仲間を集めたいですね。
西村さんとのSo-Gu体験
西村耕世さんとは、徳島県三好市でSo-Guできます。
※現在、体験プログラム鋭意作成中。