#36 田尾 海星【島根の山里で全力疾走し続ける、若きそば職人】山県そば

やるからには、すべて全力で

――島根県奥出雲町、山々に囲まれた里山の町に佇むそば処「山県そば」。創業20年、素材と味にこだわった奥出雲そばを提供する人気店です。県外のファンも多いお店でそばを打つのは、25歳の若き職人。地元出身の田尾海星さんは、19歳でUターンして山県そばで修行を開始。現在は、看板を背負う職人として、仕事と真摯に向き合いながら、夢に向かって走り続けています。

偶然か必然か、そばとの出会い

――はじめに、田尾さんの経歴や山県そばとの出会いをお聞かせください。

【田尾】
今は、自分が生まれ育った町、島根県仁多郡奥出雲町の三井野原という地区に住んでいます。中学校までは地元で過ごし、高校は出雲市にある学校に進学しました。卒業後は、一度会社に就職しましたが、半年で退職。そのまま出雲市内で少しの間アルバイトをしていました。山県そばとの出会いは、今もお店に飾ってあるEXILEのジャージがきっかけです。当時EXILEの大ファンで、友達から「山県そばっていうお店にHIROさんから貰ったジャージが飾ってあるよ」と話を聞きまして、すぐにお店に行きました(笑)。そのときに、「うちに来ないかと」声をかけていただきました。そばを打てる人が出てしまっていて、そば打ちを探している状況だったんですよね。もちろん、その日に「はい、わかりました」なんて簡単には言えず、一度出雲市に戻りました。

――すごいタイミングときっかけですね。働き始めたのはいつ頃ですか?

【田尾】
もともと人と話すことや接客が好きで、奥出雲町がそばの町として注目されていたことも知っていました。そこで、地元でそば屋を開くことを一旦ゴール地点にしようと思い、19歳のときに山県そばで働き始めました。一度地元を離れたことで奥出雲の良さに改めて気づき、この場所を盛り上げたいという思いもありました。

――未経験から入られたと思いますが、お客さんに提供できるまで、どのくらいの期間かかりましたか?

【田尾】
ひたすらそばを打ちましたが、最初のうちは何回打ってもダメでした。社長に認められ、お金をいただけるそばを打てるまでは、1年くらいかかりましたね。それまでは、注文をとったり、料理を提供したり、主にホールで働いていました。

絶対に手を抜かない、こだわりのそばを

――山県そばのこだわりや魅力をお聞かせください。

【田尾】
主に、常陸秋そばという品種のそば粉を使っています。茨城県が原産地のそばで、社長がお店を開く前、全国のそば屋を巡るなかで一番ピンときたそばと聞いています。ほかに、奥出雲町で昔から育てられてきた在来種、横田小そばも使っています。横田小そばは、一度絶滅しかけたんですが、地域の方々が守り続けてきたそばなんです。そばの実が小さく、粉にできる量もわずかですが、香りや甘みが抜群に良くて。今は、この2種類のそば粉を使い、土日祝日は数量限定で横田小そば100%、いわゆる十割そばも提供しています。また、そばだけではなく、つゆも一緒に楽しんで欲しいという思いがあるので、そばとつゆのマッチングはかなり意識してつくっています。

――ぜひ、おすすめメニューや人気メニューをご紹介ください。

【田尾】
おすすめは、「おろちそば」です。奥出雲に伝わるヤマタノオロチ伝説にかけてつくったメニューなんですが、そばの上にそばの実と古代米をのせて、海苔やかつお節などの薬味も添えて、そこにつゆをかけて召し上がっていただきます。そばの実や古代米の食感がそばとの相性がよく、盛り付けや見た目はオロチの目玉をイメージしています。

――日々のお仕事で大切にしていることは何でしょうか?

【田尾】
職人としてそばを出し、その対価としてお金をいただいているので、中途半端なものは絶対につくりません。当たり前のことを当たり前にするって簡単な話ではなくて、これくらいでいいかと思ってしまうのが人間だと思うんですよ。そうならないよう、日々自分に言い聞かせています。うちは国道からだいぶ離れた山奥にあるそば屋なので、わざわざ山県そばを目指して来てくれているお客さんが多いと思います。なので、絶対に手を抜かない、自信のあるものしか出さないことを常に心掛けています。「おいしかったよ!また来るね!」と言ってもらえるようなそば作りをずっと続けていきたいですね。

これからも大好きな奥出雲で

――田尾さんが盛り上げたいと思い、帰ってきた町である奥出雲の良さ、地域の魅力などをお聞かせください。

【田尾】
奥出雲町は、ひと言でいうと何でもある町なんですよ。そばはもちろん、お米業界で西の横綱と呼ばれる仁多米やブランド和牛の仁多牛など、全国に誇れるものが奥出雲町にはたくさんあります。えごま油や豆腐も有名ですね。スポーツでいえば、ホッケーの町として知られています。住んでいる三井野原地区には、日本最大規模のループ橋があり、そこから見る景色も抜群で、秋は紅葉もすごく綺麗です。温泉も4カ所あるので、旅行で来られた方は、色々なところを巡ることができます。一度離れたことで気づいた良さもたくさんありますが、この町は本当に魅力の宝庫だと思います。

――最後に、今後の目標をお聞かせください。

【田尾】
来年(2023年)の春、山県そばの味を引き継いで、三井野原でそば屋を開く予定です。実家が農家なんですが、自宅とは別でドライブインも経営していまして、そこを改装して独立しようと思っています。単純にそば屋をやるのではなく、あくまでも自分がしたいのは地域を盛り上げることなので、奥出雲町に来てもらうための活動やイベントも開催していきたいですね。やるからには、すべて全力です。

田尾さんとのSo-Gu体験

田尾海星さんとは、島根県奥出雲町(仁多郡)でSo-Guできます。

※現在、体験プログラム鋭意作成中。

>あなたの町の活性化、So-Guがお手伝いします!

あなたの町の活性化、So-Guがお手伝いします!

あなたの町にも、きっといるはず「面白い人」。
私たちSo-Gu運営チームは、人にフォーカスした地域活性や関係人口(地域のファン)の創出を全力でサポートします。一緒に地域を盛り上げましょう!

○令和3年度~令和5年度
徳島県三好市「三好市官民共創地域ソリューション開発プログラム」
○令和4年度
経済産業省「令和4年度地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業(地域・社会課題の発掘と解決に向けたマッチング)」
○令和5年度
中小企業庁「令和5年度地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業(地域・社会課題の発掘と解決に向けたマッチング)」

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