――徳島県美馬市脇町、かつて城下町として栄えた歴史ある町に個性的な複合施設があります。「PLAY & WORKS ADLIV(アドリブ)」。世界的に見ても珍しい印刷工場をリノベーションした施設は、ホステルやコワーキングスペース、カフェなどの機能を持ち、現在は交流拠点としても親しまれています。
そんなADLIVを生み出したのは、地元の老舗印刷・広告会社の3代目、ナカガワ・アド株式会社代表取締役の中川和也さん。
中川さんは、地域のプラットフォームであるADLIVを基点に様々な企画を立ち上げ、シェアリングの概念や仕組みを活用しながら、あらゆる事業で先進的な取り組みを進めています。
広告業はインプットした情報をより良い形でアウトプットする仕事
――創業1960年、現在3代目の中川さんですが、会社の成り立ちについてお聞かせください。
【中川】
当時、祖父が大阪の印刷会社での修行を終えて帰ってきて、新聞屋のお手伝いをしていたんですが、その仕事を継業する形で活版印刷業を開始したのが会社の始まりです。印刷物や印刷商品は歴史を紡いでいくものなので、これは絶対に無くならない仕事だろうという思いから、生業としていくことを決めたと聞いています。
2代目(父)は創業者の強い想いを引き継ぎ、会社を守り続け、僕がちょうど30歳のとき、2002年に社長交代しました。
――代表取締役に就任すると同時に会社名を変更し、株式会社へ移行しました。その理由をお聞かせください。
【中川】
祖父から父の代までは、「徳島県印刷企業組合 脇町営業所」、通称「中川印刷」という企業組合体で続けていました。ただ、企業組合は税理士が一人で、最後には合算もされるので、利益構造の把握や分析がしにくい。銀行から融資を受ける際も手間や諸問題があるという事もあり、父と相談したうえで、代表就任と同時に株式会社へ移行しました。
その際、デジタル化への対応や仕事の幅を広げるために、メイン事業を印刷業から広告業に変更しました。
――代表就任後、意識して取り組んだことや大きく改革したことはありますか?
【中川】
まずは、経営理念ですね。印刷や広告業は、インプットした情報をより良い形に編集・加工してアウトプットする仕事だと思っています。過度に誇張するわけではなく、ブランディングして出していく。パッケージでも、こんな風にしたらエンドユーザーに響きますよ、と提案する。それがナカガワ・アドを設立した際に作ったコンセプト、「私たちは広告を通じ、価値ある喜びと感動を創造する人である」に繋がっています。
――中川さんご自身のキャリアや経歴についても少しお聞かせください。
【中川】
中学校までは脇町(現:徳島県美馬市)。高校は、高知の明徳義塾高校に進学しました。ご存知の通りスポーツ名門校なので、あの3年間は正直大変でしたね(笑)。
高校卒業後は、東京の印刷専門学校に進学し、2年間勉強の日々を送った後、大阪のデザイン会社に就職しました。主に新規開拓の営業職として3年ほど働き、地元に帰ってきたのは24歳の頃です。最初は、大阪時代のような新規開拓の営業を担当していましたが、当時は地元の事情を全く分からず働いていたので、今思うと凄く効率が悪かったと思います(笑)。
食と農に強い広告会社へ
――現在、印刷や広告業のノウハウを活かし、様々な角度から事業を展開されていますが、きっかけは何だったのでしょうか?
【中川】
まず、2011年に自社ブランドの「ベジハッピー」を立ち上げました。今から11年前、2010年に徳島市内で食のイベント「とくしまマルシェ」がスタートしたんですが、農業系のお客さんと一緒にマルシェに出たのがきっかけですね。
ベジハッピーでは、「食べる幸せ、育てる喜び、野菜で広がるハッピー生活」というコンセプトを掲げています。お客さんの商品の売り方をいきなり大きく変えるのはリスクがあるので、野菜のパッケージや売り方の提案、陳列やPOPなど、まずは自分たちから、広告会社目線でリブランディングする所から始めました。
――そこから、あど畑事業部へ繋がっていくのですね。
【中川】
もう少し広告目線でクライアントさんのお手伝いが出来ないかと考え、2013年に食と農を応援する事業部、「あど畑事業部」を作りました。
あど=広告、広告畑を基に、食と農をデザインすることを理念に置き、徳島県の農家さんや食に携わる企業とアライアンスを組み、商品ブランディングのお手伝いやイベントの企画・運営など、連携して新しい価値を創ることを目指しています。こういった事業の流れは、“食と農に強い広告会社”という自社の強みに繋げています。
印刷工場を交流拠点にリノベーション
――では、2018年にスタートさせたADLIVについてもお聞きします。何がきっかけで印刷工場をリノベーションすることになったのでしょうか?
【中川】
2015年に印刷機を撤去し、印刷工場だったスペースが倉庫になったので、何かに活用出来ないかと2年くらい考えていました。
そんな時、柴田さんや西崎さんと話をしている中で、とある空き倉庫を活用する構想を聞き、これをウチでやりたい!と思ったのがきっかけです。地元事業者としてプラットフォームを作ることが出来たら、ここが人や仕事の拠点になり、絶対面白い展開になると感じましたね。
――ADLIVのコンセプト、そこにかける想いをお聞かせください。
【中川】
タイ・バンコクにある施設からもインスパイアされているんですが、AD(広告)に住むイメージで、ADLIVと名付けました。コンセプトは、「場所・スキル・人をSHAREする」。
ADLIVに来る人と仕事が出来る、仕事が出来たら継続的に繋がれる。多様性のある人が集まれば、そこで化学反応も起きる。なので、個人的にはクリエイティブな人に集まって欲しいなと思っています。
――宿泊やコワーキング、カフェ、イベントなど、様々な顔を持つADLIVですが、構想段階からプラットフォーム的な施設にする予定だったのでしょうか?
【中川】
この3年半、ADLIVを通して色々な方と出会う機会や話す機会がありまして。その中で、都市部から来られる大企業の方もいらっしゃるのですが、そういった方々に地域で頑張っている人を紹介したり、交流会を開いたりしているうちに、自然と交流拠点になっていきました。
――地元出身者、地元事業者として、地方創生や地域活性化というキーワードとはどう向き合っていますか?
【中川】
とりあえず、自分たちが楽しかったら良いかなと(笑)。でも、結局楽しんでやっていることにしか人は感動しないし、共感もしないので。楽しんだ結果、何かしらの形で地域に貢献出来たら良いなと思っています。
――最後に、今後の目標をお聞かせください。
【中川】
クライアントさんだけではなく、これからは業界のお手伝いも出来たら良いなと考えています。例えば、印刷会社のシェアリング。日本全国、地域は違えど、印刷会社の仕事自体は大きく変わらないので、企業間での事業シェアや社員のスキルシェアなど、印刷・広告会社の経済圏のようなネットワークを構築していきたいと思っています。
中川さんとのSo-Gu体験
中川和也さんとは、徳島県美馬市でSo-Guできます。
地域と出会い、人と出会う。地元事業者とのADLIV交流
老舗印刷会社の工場を“泊まれる工場”としてリノベーションした複合施設「PLAY & WORKS ADLIV」。地域のプラットフォームでもあるADLIVで、徳島県美馬市の事業者や「うだつの町並み」で知られる脇町のコミュニティと交流しませんか?
面白い人達とのSo-Guは、単なる交流だけにとどまらず、そこからプロジェクトが生まれる可能性もあり!自身のスキルや経験を活かせる環境、ローカルイノベーションに携わるきっかけづくりを提供します。
【PLAY & WORKS ADLIV】
ホステルやコワーキングスペース、カフェなどの機能を持つ、元印刷工場をリノベーションした複合施設。場所・スキル・人のシェアリングをコンセプトに、徳島のプラットフォーム的な役割も担っています。
https://www.adliv-tokushima.com/
体験場所 | PLAY & WORKS ADLIV |
所要時間 | 120分 |
料金 | 10,000円(別途飲食代) |
予約リクエスト期限 | 14日前の18:00 |
参考URL | https://www.adliv-tokushima.com/meeting |
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