――福岡県の南部、大分県との県境にあたるうきは市。美しい自然や豊富な地下水に恵まれ、県内有数の果物の産地として知られています。近年は、移住者も増え、各々が個性的な取り組みを進めています。養鶏場を営む森智寛さんも、うきは市へ移住し、創業した人のひとり。今回は、地元出身者で、同じくうきは市で事業を営む大熊充さんとともに、まちの魅力や今後について語っていただきました。
うきはをフィールドに、常に楽しく面白く
――はじめに、自己紹介をお願いします。
【大熊】
75歳以上のおばあちゃんたちが働く会社「うきはの宝」は4期目に差し掛かるんですが、もともとデザインやWebのデザイン事務所を約12年運営しています。デザイン事務所として田舎で都会の仕事を請ける、ということはずっとやってきたんですが、地元のことは何もできていなくて。何か故郷に貢献できないかと思い、最初は非営利でおじいちゃんおばあちゃんの送迎サービスを展開しました。その活動の中で、おばあちゃんたちが国民年金の受給だけでは生活がままならなかったり、独り暮らしで僕としか人と会わない状態だったり、高齢者の生活困窮と孤立を目の当たりにしました。おばあちゃんたちの生活が楽になるよう、働く場で同僚やお客さんとコミュニケーションを取ることで孤立も防げるんじゃないかと思い、75歳以上のおばあちゃんたちが働ける会社を2019年10月に立ち上げました。
現在は、おばあちゃんたちとおばあちゃんらしい食品を開発して製造販売しています。あとは、他の地域での高齢者就労のアドバイザーやコンサルティング、おばあちゃんたちのプロデュースなどもおこなっています。
【森】
僕はもともと福岡市で働いていたんですが、4年ほど前に脱サラと移住をして、うきは市で養鶏場を経営しています。今は任せられるスタッフがいるので、これから新しいことを色々やっていきたいと思っているところですね。そのうちの一つとして、集落をリゾート化できないかと計画しています。リゾートというと豪華に思われますが、レストランや宿泊施設があったり、サウナがあったりというイメージです。その集落は、今はほとんど人が住んでいないんですが、観光客も訪れるような綺麗な場所で、このまま無くなっていくのはもったいないんですよね。
――大熊さんは地元でもありますが、事業や活動の場所としてのうきは市の魅力はどんなところでしょうか?
【大熊】
九州以外の方にはあまり馴染みがないと思いますが、うきは市はポテンシャルの高い町なんです。人口は3万人弱ですが、年間百万人以上の観光客が訪れています。そのほとんどが日帰り旅行なので課題はありますが、とにかく多くの人が訪れている。豊かな自然の恩恵を受けて、フルーツの一大産地でもあります。そこから派生して、カフェやスイーツ店が増え、フルーツを使った加工品もどんどん増えて、ここ数年で人気が急上昇しました。移住者もどんどん増えています。
――そういった土壌で、色々な取り組みも増えているのでしょうか?
【大熊】
プレイヤーは移住者が中心になっていると思います。やっぱり何かをやろうと移住してくるので、自分たちで動き始めるケースが多いですね。まちづくりや都市計画的な部分でいうと、市役所が中心になりますが、廃校をキャンプ場として活用する民間事業者なども入ってきています。僕や森君のような地元の事業者は、各々で動くことの方が多いですね。
【森】
そうですね。みんなでまちづくりやまちおこしというより、自分たちが楽しくできたらいい、くらいの感覚でやっています。ただ、やっている人たちのセンスが良かったり、もの自体が良かったりするので、結果としてうきは市の事業者が目立つときもあるかもしれないですね。
地域で取り組む仲間づくり
――今後取り組んでいきたいことをお聞かせください。
【大熊】
まちづくりというより、人づくりみたいなことは意識してやっていきたいですね。やっぱり若い人が出てこないと。今は、森君が一番若い事業者で、ようやく地元の20代でも商売を始める人が出てきましたが、まだ彼らは自分の仕事を軌道に乗せる段階の人たちが多いです。
――そのあたりは、地域ぐるみで取り組むことになりそうですね。
【大熊】
そうですね。ここに関しては、仲間内だけではなく、地域で協力し合って取り組まなければと思っています。地元の若手をはじめ、うきは市に興味をもって移住・起業したい人などを何かしらサポートしていきたいですね。
【森】
僕の場合は、スタートラインの立ち方が分からないケースや、もっと一般的な悩みをもった人たちを支えたいですね。僕の所に相談に来る人は、「何かやりたい、でも何をすればいいか分からない」とか「田舎で働くイメージができない」という人が多くて。でも、普通に企業に勤めていて、ビジネス的な感覚も持ち合わせていて、僕からするとすごくもったいない。とりあえずやってみたらいいのに、と思います。なので、そういった人たちをサポートして、引き上げられるようになりたいです。
たくさんのゼロイチが生まれる町に
――どんな地域になって欲しい、またはしていきたいですか?
【大熊】
今まで色々な事業をやってきましたが、基本的にはスモールビジネス。いわゆる“ゼロからイチ”です。田舎では絶対に必要だと思っていて、そういうことができる人が生まれる町にしていきたいですね。それによって、事業者間の連携もできるようになるんです。例えば、卵が必要になったら森君のところ。回りまわって、必ず自分のやっていることにも返ってくるし、別に返ってこなくてもいいんです。ただ、そういう動きをしていかないと、誰も何もやりたくない地域になってしまうと思うので。
――新しいお店やサービスがどんどん生まれていく、すごく楽しい町になりますね。
【大熊】
そうですね。新しく始める人が出てくれば、次はその人たちに憧れて下の世代から立ち上がる人が出てきて。十人十色で集まって、形になればすごく面白い町になると思います。そのためにも、今後は新しい仲間づくりをメソッド化といいますか、仕組み化して見える形にしていきたいですね。
大熊さん、森さんとのSo-Gu体験
大熊充さん、森智寛とは、福岡県うきは市でSo-Guできます。
※現在、体験プログラム鋭意作成中。